妊娠期の生活を大切に
妊娠は出産時だけではなく、妊娠期間もとても大事です。
健康な赤ちゃんを産むためには、同じく健康な生活が基本になります。特別なことをするわけではなく、衣食住を大事にし、生活を丁寧に整えることが重要なのです。
もし今の生活が少し乱れていると思うなら、見直してみましょう。
朝起きて、夜寝て、3食きちんと食べて、体を動かして、休息を取る。
自分はどんなものを食べているのか、夜は何時に寝ているのか、そういったことを考え直すといいと思います。
人によって生活リズムは違います。朝起きて夜寝ると言うのも、時間帯はバラバラですよね。しかし、体内時計に逆らわないように自然に過ごすのが大事です。お産とはホルモンで成り立っていますから、そのホルモンの働きを良くするためには、免疫力を下げないことも重要です。
免疫力を下げないというのは、生きる力を高めること。
つまり、食べること、動くこと、休むこと、体を冷やさないこと、こういった基本的なことを大事にすることが、すべての要になると思うのです。
最近びっくりしたのは、お風呂に浸からない人が多いことです。
夏ならまだしも、冬でもシャワーだけの方がいるようです。体を温めることってとても大事なのに、忙しかったり、お風呂を沸かすのが面倒だったりするのでしょうね。シャワーだけでも清潔にはなりますが、体を温めることも大切なのです。
冬にシャワーだけだと体も温まりきらないですよね。体を温めることで、ほっこりしてリラックスできて、全身がポカポカして血流も良くなります。そうすると子宮も温かくなり、赤ちゃんも気持ちいいはずです。こうしたことを大切にして、自分と赤ちゃんの繋がりにも気付いて大事にしてほしいですね。
「何かあったら心配」。その「何か」は自分で防げることも
助産院はお医者さんがいないから、「何かあったらどうしよう」と心配になる人もいるかもしれません。では「何か」とは具体的には何でしょう?そう聞くと出血とか早産とか色々出てきます。でも、それらはいきなり起こるわけではありませんよね?様々なことの積み重ねから、身体の状態がそうなっていっているということが多いのです。
ですから、出血しない、早産にならない、感染症にかからない体作りが大事なんです。
逆にいうとそういう体作りを自分でできますし、自分でそういったリスクを防いでいくことだってできるのです。そのために、基本的な生活習慣が大事なのです。これがしっかりしていると、ほとんどのお産は問題なく進むと思います。初産婦さんでも経産婦さんでも関係なく、今お腹に入っている赤ちゃんと向き合うのは一度きり。だから、その時間を大切に過ごしてほしいと思います。
当院に最初に来られた時には、このことをしっかり説明します。
お産するのは本人です。ご自分で努力しないとどうしようもないのです。
私たち助産師が代わりに産むわけじゃないですからね。
まずは産む本人が努力すること。そして、医療者は全力で見守ってサポートします。生活の拠点は家庭なので、家族がどれだけ見守り、寄り添ってくれるかも大事です。本人、家族、医療機関、この3本柱で支えていくお産ですね。
これは受験とも似ているんです。受験の当日に怪我をしたり風邪を引いたりしたら、今までの努力が台無しですよね。日々コツコツと準備することで、当日を乗り越えられるんです。だから、健康な生活を送ることでリスクは下がります。妊婦さんには、生活を丁寧に過ごすことが安全なお産の基本になると伝えたいです
働く妊婦さん
私がこの仕事を30年やってきて最近思うのは、勤労妊婦が圧倒的に増えたことです。
昔は妊娠や結婚を機に家庭に入り、自分中心の生活ができました。でも今は、社会的な役割があるためにしんどくても休めない、残業もある、ストレスも多いという状況です。
20年前なら、主婦が多くて、疲れた時には休めましたが、今はそうもいきません。産前7週間からの産休も、正社員ならしっかり取れますが、パートだと経済的な理由や職場の忙しさでなかなか休めないこともあります。美容師さんなどは特に、ギリギリまで働かなければならないことが多いです。
産休は、出産に向けて気持ちや体を整えるための準備期間です。でも、働けるから働くという状況では、その準備がおろそかになります。しかし、収入のために働かないといけない人もいるので、働くなとは言えません。
昔と違って、今は男女平等や男女雇用機会均等法が進んでいて、男性と同じように働く女性が増えています。
でも、妊娠・出産するのは女性なので、最近の10年特に、働くことが当たり前になり、それがストレスになっている人も多いです。仕事と運動とはまた違います。通勤や職場で動くのは労働で、自分のために運動するのとは違うのです。
妊婦さんはまだまだ守られていないと思います。つわりがあっても、「妊娠は病気じゃないから」と言われてしまうこともあるようです。でも、油断すると大きなリスクにつながることもあります。誰も守ってくれないこともあるので、まずは生活を整えたり見直したりすることが、安全なお産のベースになると思います。
本当に色々な社会制度は整っているけど、産む人が健康でないと、社会もこまりますよね。何よりも妊婦さんがまず心身ともに健康な生活を送れることが大事だと思います。それが今、意外と簡単ではないようです。
働きながら無理して手の込んだ料理を作らなくてもいいんです。お米を炊いて、具だくさんのお味噌汁があれば十分です。それ以外に無理してたくさん作ろうとしなくても大丈夫。まずは、ご飯を炊くことから始めてみましょう。
最近では、お父さんの育児参加への社会制度が整ってきたおかげで、育休を取るお父さんが増えてきました。特に公務員の中には、1年間の育休を取るお父さんもいますね。上手く制度を使って、お母さんと共に出産と育児に取り組んでほしいですね。
母乳育児
時代が変わる中で、母乳育児も昔は当たり前でしたが、今では母乳にするかミルクにするか選べるようになりました。ミルクだと旦那さんも育児に参加できるというメリットがあります。でも、母乳には赤ちゃんにとって免疫などの大切な成分が含まれているので、できれば飲ませてあげたいのですが、母乳を強要するとハラスメントになることもあり、難しい時代です。
私たち助産師は赤ちゃんの代弁者として、お母さんに最終的な選択をしてもらいますが、母乳のメリットも伝えなければなりません。ミルクでも赤ちゃんは育ちますが、母乳にはお母さんの細胞が含まれているので、1滴でも飲むことが赤ちゃんにとってのメリットになるんです。それを伝えるのが私たちの役割です。
仕事に早く戻りたいお母さんや育児に参加したいお父さんが増える中で、時代とともにお産の価値観も変わっていくでしょう。でも、どんな時代でも基本は変わりません。健康な体が基本です。どこで産むにしても、自分の体をしっかり整えてもらいたいのです。
また、お母さんが母乳で育てたいと思えるような社会にしていくことが大切だとも思います。妊娠期は「仕込み期間」で、この期間にどれだけ体を整えるかで、その後のお産や育児に大きく影響します。健康な体作りを進めていくことで、お産も良い経験になるでしょう。大変だったけど産んでよかったと思えるようなお産にしてもらいたいです。一生忘れない経験ですからね。
助産院で産むこと
助産院だとお医者さんがいないから、「何かあったらどうしよう」と心配になる人もいます。では「何か」とは具体的には何なのでしょう?出血や早産など色々な心配がありますが、それはいきなり起こるわけではなく、日々の生活習慣などからそうなることが多いのです。
日頃から出血しない、早産にならない、感染症にかからない体作りが大切です。日々の生活がしっかりしていると、ほとんどのお産は問題なく進むのです。初産婦さんでも経産婦さんでも、今お腹の中にいる赤ちゃんと向き合うのは一度きりです。その時間を大切に過ごしていきましょう。
当院に最初に来られた時には、こういったことをしっかり説明します。お産するのは本人なので、自分で努力しないとどうしようもないのです。私たち助産師が代わりに産むわけではありません。まずは産む本人が努力すること。そして、医療者は全力で見守ってサポートします。生活の拠点は家庭なので、家族がどれだけ見守り、寄り添ってくれるかも大事です。本人、家族、医療者この3本柱でお産にのぞむことになります。
お産は受験とも似ていますね。受験の当日に怪我をしたり風邪を引いたりしたら、今までの努力が台無し。日々コツコツと準備することで、当日を乗り越えられるのです。健康な生活を送ることでリスクは下がります。妊婦さんには、生活を丁寧に過ごすことが安全なお産の基本になると伝えたいです。
母乳育児について
例えば、誕生日にはバースデイケーキでお祝いしたりしますよね。その時に、家族みんなで子供が生まれた時のことを話し合うのが素敵だと思います。「毎回「あなたが生まれた時はね」と言って生まれた時のことを話すことは、子供が自分がどれだけ大事に思われていたかを感じとれる機会になります。そのようなエピソードは子供の自己肯定感につながり、子供の心の安心にもつながるのではないでしょうか。
助産院で産むという選択ができること自体が幸せなことです。助産院に来られるということは、基本的に健康である証拠でもあります。誰もが健康に産めるとは限りませんが、しっかりと準備をすることで自信を持つことができます。「こんなに頑張ったから大丈夫」と思えることが、自信とポジティブな気持ちにつながっていくと思います。
医療的なサポートがあることが安心ではなく、自分で安全・安心を築くことができるのです。どこで産むにしても、自分で健康な体を作ること。助産師はそのサポートを一緒に行う立場にあります。
お産はゴールではなく通過点です。そこをどう通過したかがその後の人生にも影響します。どのようなお産にするか自体が今後のあなたの生き方にもつながっていきます。
出産までの期間も含め、わたしたちはあなたのお産が「丁寧なお産」となるようにサポートしていきます。